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横浜地方裁判所 昭和48年(わ)3525号 判決

本店所在地

神奈川県横浜市中区山下町一二四番地

法人の名称

海栄海運株式会社

右代表者

代表取締役 金海政昌

本籍

同所

住居

同県同市金沢区富岡町五二七番地

会社社長

金海政昌

大正一五年一〇月一四日生

右の被告会社及び被告人に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官福島啓充出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一  被告会社海栄海運株式会社を罰金五〇〇万円に処する。

二  被告人金海政昌を懲役六月に処する。

ただし、被告人金海政昌に対しこの裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

三  訴訟費用(国選弁護人関一郎に支給した分)は、被告会社及び被告人の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社海栄海運株式会社(以下単に被告会社と略称する。)は、神奈川県横浜市中区山下町一二四番地に本店を置き、油槽船運送事業等を目的とする資本金三、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人金海政昌(以下単に被告人と略称する。)は、被告会社の代表取締役であつて、被告会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、決算時に架空経費を計上したり、自宅建築費を被告会社経費に計上したりする等の不当な方法によつて被告会社の所得を秘匿したうえ

第一  昭和四四年一二月一日から昭和四五年一一月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が三、七一八万二、四八七円で、これに対する法人税額が一、三四〇万一、八〇〇円であつたのに、昭和四六年二月一日、神奈川県横浜市中区野毛町三丁目一一〇番地所在、所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が二〇六万五、〇八二円で、これに対する法人税額は無い旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、被告会社の正規の法人税額一、三四〇万一、八〇〇円をほ脱し

第二  昭和四五年一二月一日から昭和四六年一一月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二、三六七万七、七三一円で、これに対する法人税額が八四三万八、七〇〇円であつたのに、昭和四七年一月三一日、前記横浜中税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が二五七万四、九四九円で、これに対する法人税額は無い旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて、被告会社の正規の法人税額八四三万八、七〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部に通じ

一  被告人金海政昌の

(1)  当公判廷での供述

(2)  大蔵事務官に対する質問てん末書九通

(3)  検察官に対する供述調書三通

一  株式会社の登記簿謄本

一  芹沢作次作成の海栄海運(株)所属船舶明細書と題する書面(添付の船舶の登記簿謄本九通を含む)

一  加藤万喜の大蔵事務官に対する昭和四七年一〇月二七日、同年一一月二四日付質問てん末書

一  海老塚卓の大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)及び検察官に対する供述調書

一  底押繁徳、石山豊松、敷金包夫、花村賢治の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  芹沢作次作成の「簿外賞与支給額と源泉所得税額明細表」および「賞与支給時期に社長に渡した現金の明細表」と題する書面

一  川村虎夫作成の「金海政昌所有の船舶にかかる運賃明細書」と題する書面

一  底押造船株式会社代表取締役底押繁徳、香椎産栄株式会社代表取締役香椎、田中技研工業株式会社代表取締役田中清各作成名義の「海栄海運(株)との取引について」等と題する書面

一  安田火災海上保険株式会社横浜支店長福田裕、大正海上火災保険株式会社横浜支店長小山清吾、東京海上火災保険株式会社海損部長梶山正各作成名義の「船舶保険金の支払について」と題する各書面

一  加藤万喜、海栄海運株式会社経理課長芹沢作次各作成の「社長および金海博江関係入出金明細」と題する各書面

一  大蔵事務官作成の経費否認調書、減価償却調査書、船舶保険金調査書及び銀行調査書

一  取締役会議事録

一  法人税決定決議書綴(横浜地方検察庁昭和四八年領第一、〇四七号符一)、請求書等一袋(同号符一九二-一)のほか

判示第一の事実

一  加藤万喜の大蔵事務官に対する昭和四七年九月二八日、同年一〇月九日、同年一二月九日付質問てん末書及び検察官に対する供述調書二通

一  西川工業株式会社代表取締役西川栄一作成の「金海政昌氏との取引内容について」と題する書面

一  大蔵事務官作成の海栄海運(株)の昭和四五年一一月期における未納法人事業税額計算書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(ただし自昭和四四年一二月一日至昭和四五年一一月三〇日と記載のもの)

一  総勘定元帳一冊(横浜地方検察庁昭和四八年領第一〇四七号符五)、清算表一部、決算整理伝票一冊、メモ一枚(同号の符七一-一)

判示第二の事実

一  芹沢作次の大蔵事務官に対する質問てん末書(六通)及び検察官に対する供述調書(二通)

一  荒木秀巨の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  ヤマギワ電気株式会社横浜支店長久保田美治、株式会社望月商店取締役社長望月治男、大進木材株式会社取締役社長外瀬史各作成名義にかかる「金海政昌殿との取引内容について」と題する書面

一  大蔵事務官作成の海栄海運(株)の昭和四六年一一月期における未納法人事業税額計算書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(ただし自昭和四五年一二月一日至昭和四六年一一月三〇日と記載のもの)

一  総勘定元帳一冊(横浜地方検察庁昭和四八年領第一〇四七号符六)、精算表一部(同号符七〇-一)、伝票等入りメモ帳(同号符一〇二-一)

(法令の適用)

一  被告会社の判示第一、第二の各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項に該当し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の多額の合算額の範囲内において、被告会社を罰金五〇〇万円に処する。

二  被告人の判示第一、第二の各所為は、いずれも法人税法一六四条、一五九条一項、二項に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、犯情が重いと認める判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において、被告人を懲役六月に処することとし、なお、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間、右刑の執行を猶予する。

三  訴訟費用(国選弁護人関一郎に支給した分)は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により、被告会社及び被告人に連帯負担を命ずる。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤廣国)

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